対談記事
〜BWSの取り組みと展望〜
明日を切り開くリーダーのために!
共に学び経営トップとリーダーのための気づきと学びのビジネスワークショップ
MTCA・経営技術コンサルタント協会が20周年を迎えるにあたり、そのメイン事業として企画いたしましたビジネスワークショップ(BWS)につきまして、その企画意図を実行委員会メンバーに聴いてみたいと思います。
蛯谷:MTCAの20周年記念事業実行委員会委員長を務めさせていただきました蛯谷です。MTCAは以下の4つの活動指針を掲げています。
1. MTCAは世代を超えた知的交流の場であり、豊かな経験を共有する場を提供します。
2. MTCAは多彩な人材のゆるやかなつながりを尊重し、自由闊達な交流による相互研鑽の促進に努めます。
3. MTCAは経営に資する知識・思考技術の普及・伝承・発展・活用に努め、産業社会の発展に貢献します。
4. MTCAは健康で充実したシニアライフを支援します。
この指針に沿って、「MTCAらしい活動とは何か」という協会設立の趣旨・意義について私たちなりに改めて考えてみました。
日本経済を支える中小零細企業の経営者のみなさんは、コンサルティングというと大手のコンサルティングファーム等を連想して、「うちの会社には関係ないな」「うちではとてもそんな予算は出せない」と距離をおいていることが多く、また、コンサルに依頼したところでいったいその費用に見合った効果がどれほど見込めるのか懐疑的にとらえて、躊躇しているケースもあるように思います。一方で多くの課題に直面し、どこから手を付けたらいいのか、どう対処していけばいいのかについて適切なアドバイスを受けたり経験値があるわけでもなく、結局日々の業務に追われて課題が山積のまま手つかずで、なかなかトンネルを抜けられないながらもがんばっておられる状況の企業が多数あります。
そうした中小零細企業の経営者のみなさんが抱えておられる諸問題について、MTCAとして力になることはできないか。あちこちで開催される「経営セミナー」と一線を画した、「明日から試してみよう」「一般論でなく自社の課題解決に採り入れてみよう」といった声が上がるような中小零細企業が実際に「実践」できるヒントを持って帰ってもらえるような場が作れないか。
そのためには、講師(専門家)からの一方通行の発信だけではなく、受講者側と専門家が自由に意見交換でき、解決の糸口をつかみ納得いくところまで双方向のコミュニケーションが行える時間を共有することが必要で、MTCAはその答えとしてワークショップを開催することとしました。このBWSを、実行委員会の中で中心になって企画立案した藤井さんにその狙いをお話しいただきたいと思います。
藤井:実行委員の藤井です。
BWSは、同じ悩みや課題を持つ経営トップ・リーダーが出会い、交流し、さまざまなイベントを通じて各々が知見と見識を高める中で、お互いを知り共に学ぶ場として企画されたワークショップです。
参加者の利便性を考えて大阪駅からアクセスの良いグランフロント大阪北館のナレッジサロンを会場に選び、机をロの字に設営して講師と受講者が車座になって学ぶスタイルを採用し、すべてのプログラムをアーカイブ視聴ができるようにしました。
実行委員会では経営者が抱える課題として以下の4つのテーマを設定しました。
A:ファイナンス戦略
B:業務改善
C:人材教育
D:事業・経営承継
これらのテーマを解決していくための専門家による最新事情を踏まえた講座、加えて経営者として習得しておくべきビジネスマナーや常識を学ぶ講座、さらには座学にとどまらず実際に企業訪問をしてコンサル目線、経営者目線で現場を見学する機会を設けることにしました。
Aについては「勝ち抜く会社のファイナンス戦略」と銘打ち、厳しい経済環境下で勝ち抜くためのファイナンス戦略について学び、情報交換できる場を提供することを考えました。
まずは、新たな資金調達手段として注目を集めるクラウドファンディングの活用方法にフォーカスした講座を企画しました。これまでにクラウドファンディングで数々の実績を上げておられるミュージックセキュリティーズ株式会社の渡部泰地、株式会社バーシヴァルの川辺友之両氏に事例を交えながらの解説をいただきました。参加企業経営者にとりましては、クラウドファンディングのプロのアドバイスを受けながら自社事業での活用の可能性を模索したり、新規事業マーケティングとしての活用を検討いただく等、絶好の機会になったかと思います。また、元銀行員で現在ソニー生命保険株式会社で蛇谷さんの後輩の谷川駿介氏に銀行員の企業査定ノウハウを明かしてもらい銀行との交渉をスムーズに進めていくための対策について学ぶ講座も企画しました。
多くの企業が銀行融資を活用している現状で、銀行目線の決算書のチェックポイントを確認しておくことは、いわば銀行の手の内を知ることにもなり、どこをどう改善すれば評価が良くなるのか事前に把握することができ、経営改善の優先順位を決めるうえでも有効な情報共有になったはずです。
Bについては「業務改善のすすめ方」というタイトルで全4回シリーズで元住友金属工業株式会社(現日本製鉄株式会社)で田村IE技術事務所所長の田村豊氏に工程分析・稼働分析・5S活動・生産管理業務の各テーマについて、具体的に実習を交えながらの解説をしていただきました。
製造現場はもちろん、その他の業種にも応用できる理論を科学的に採り入れることは、生産性を高め、会社の士気を高めることにつながるため、問題がどこにあるのかを洗い出し、効果的に改善を試みることは是非検討すべき知見です。
蛇 谷:Cカテゴリーは私からお話しさせていただきます。人材教育のセミナーには実に様々なものがあり、実際に導入しておられる企業も多いと思いますが、果たしてどの程度成果が上がっているのでしょうか。
企業を動かしている経営者も従業員も人間です。長きにわたり経営が安定的に継続しているあるいは成長を続けている企業は、その経営理念や事業内容が素晴らしいだけにとどまらず、そこで働く「人」がいきいきと成長して生きがいを見出している企業です。
なかなか形を数値化することが難しい(無理やり数値化しようとすると逆効果になりかねない)経営を支える根っ子とは何かを学び、経営者も従業員も「元気よく、きけんよく」幸福を感じながらがんばれる職場を創り出すための良好で強固な人間関係の構築のための知見を、BCP上級認定資格者でジェロントロジー修士、物語仕事塾塾長の早崎広司氏にお話しいただきました。経営者も従業員も生きがいや働きがいを実感して成長を続けることは、会社の業績や収入、世間的な評価を得ることだけではなく、家庭を含めた健全な人間的成長です。
年齢を重ねてもなお成長し続ける加齢充達という概念を学び、明日への活力を注入していただけたと思います。
ジェロントロジーの知見は企業経営に限らずこれからのシニアライフの在り方にも大きな変化を生み出しそうです。
藤 井:Dカテゴリーの事業承継・経営承継は、中小零細企業にとっては深刻なテーマです。
一昔前までは相続対策と絡めてどちらかというと税金対策に比重が偏ったセミナーが多かったように思いますが、事業承継はできても経営承継がうまくいっていない企業が多い印象があります。
最近はかならずしも世襲で継続する企業ばかりでなく、M&Aを検討する企業も増えてきています。少子化で親族内承継が困難な企業はこれからも増えてくることは必至で、金融機関等もM&Aを勧めてくるケースが多くなっているようです。
そのあたりの実情を踏まえた事業・経営承継問題を相続・M&Aのスペシャリスト、税理士の奥典久氏にお話しいただきました。
やはり実際に具体的な事例に携わっている専門家の話には説得力がありますし、個別具体的なケースに対して、それぞれどう対処していくべきなのか、示唆に富んだお話が聞けました。
蛇 谷:そうですね。
各企業の課題はやはりそれぞれの企業によって違いますし、すべてのテーマそれぞれが、個別具体的なケースに対してどう落とし込めるのかが問題で、BWSをワークショップ形式にしたのも、双方向性にすることでまさにここの部分の解決の糸口になればという狙いがあったわけです。