MTCA

クラウドファンディングの
本当のところ

『勝ち抜く会社のファイナンス戦略』
クラウドファンディングの本当のところ

開催日:2023年11月22日(火)
講師:川辺友之氏
講演概要:2014年よりクラウドファンディング事業に携わり、購入型・金融型・寄付型すべてのクラウドファンディングを経験し、それぞれの違いを踏まえた上で、今回は購入型を中心にクラウドファンディングの本当の活用方法についてわかりやすくお話ししインターネットを通じて不特定多数の支援者から幅広く資金調達するクラウドファンディングは、今や個人・企業を問わず注目された戦略的なトレンド手法になっています。MTCAのBWSでは2022年11月にクラウドファンディングの分野でトップコンサルタントとして多数のプロデュース実績を持つ川辺友之氏(株式会社パーシヴァルファウンダー)に講演いただきました。

【編集部】
川辺さんがクラウドファンディング(以下CF)に関わるようになった契機からまず教えてください。

【川辺】
私は祖父が大阪の谷町で創業した紳士服製造会社の3代目でして、バブル崩壊後にはそれまで商売のベースとなっていた大手紳士服店との取引が激減して事業の転換をするほかは生き残る道はありませんでした。製造・卸から製造・ネット通販・直営店舗の業態に転換していた2011年にCFを知りました。CFをどう進めていったらいいのかを模索し続けていたところ2014年に大阪夏の陣400周年を記念して天王寺で「真田幸村博」が開催されることを知りました。この「真田幸村博」でCFを実行してもらうためにFacebookから主催者である天王寺区長にコンタクトを取り面談していただきました。
その時に生まれたアイデアが「真田幸村スーツ」でした。真田家の家紋「六文銭」をあしらった特別仕様のボタンや不惜身命の言葉を入れたタグ、真田家の伝統カラーの赤をコントラストで配色したこだわりのスペシャルなスーツでした。お客様に先に5万円、10人のお客様で50万円。この50万円で先に新デザインの型紙を作り5万円を出してくれたお客様に新スーツをお届けするこの「真田幸村スーツ」は全国の真田幸村ファンの方から”こんなスーツを待っていた!”との声もいただき大成功となりました。

その後は、武将の子孫の方々との協力をもらい、ゆかりの地の特産品も取り入れ「織田信長スーツ」「北条氏康スーツ」「島津義弘スーツ」「石田三成スーツ」「上杉謙信スーツ」など横展開としてテレビ、新聞などメディアでも取り上げてもらいテレビを見て沢山のお客さんにご来店いただき爆発的な売り上げとなりました。おかげで当時多額の負債の会社を救うことができました。この喜びをより多くの人に体験してもらいたくてアパレル事業とは別に現在の株式会社パーシヴァルを立ち上げCFを広める活動をしています。

【編集部】
CFの魅力が凝縮された素晴らしいエピソードですね!
CFにもいろいろな種類があるようですが、全体像を教えてください。

【川辺】
クラウドファンディングはリターンの内容によって「購入型」「寄付型」「金融型」の3つに分かれます。購入型は商品やサービスをリターンとするもの、寄付型は寄付控除を受けることができる認定NPO法人や公益財団、学校、病院、社会福祉法人などが実施できます。金融型はリターンがお金や株式になるので金融取引の免許がないと取り扱えません。

今回のBWSワークショップでは購入型を中心にお話しします。購入型CFも大きく4つの種類・活用方法に分かれています。

①困っている人を助ける(社会貢献型)代表的な会社はREADYFORです。
②イベント・祭りをやるため(町おこし型、地域活性型)代表的なのはCAMPFIREです。
③ベンチャー起業・お店の開業など(ベンチャー開業型)代表的なのはREADYFORやCAMPFIRE。
④新商品・BtoCテストマーケティング(ものづくり型)代表的な会社はMakuakeです。それぞれの会社ごとに得意とする分野や特徴があるのでやろうとするプロジェクトにフィットしたサービス会社を選ぶことが必要です。

【編集部】
「クラウドファンディングの本当のところ」という今回のテーマにも関係することだと思いますが、購入型CFに取り組むときに大切なことや留意することはどんなことですか?

【川辺】
そうですね、新商品を企画して開発し告知から販売に結びつけた例を紹介してお話ししたほうがイメージしやすいと思います。全国の自治体では災害に備えて備蓄米を保管していますが、その備蓄米は賞味期限が来ると捨てられてしまうんです。その廃棄米を紙の原料に配合した日本初の紙ブランド「Kome-Kami」を奈良の紙卸会社が「食べられなくなったお米から作った紙」としてCFをしました。SDGsとクラファンを掛け合わせたんです。これをNHKがTVで取り上げて放送し、日経新聞の1面にも掲載されて新商品のPRをメディアが大々的にしてくれ、また会社の凄いPRにもなりました。

メディアは今の時世のキーワードに関連したような動きを常にチェックしているんですね。CFを通してメディアが取り上げてくれて告知PRやプロモーションに繋がったり、自社でプレスリリースを作ってそれを投げかけたりすると中小企業の動きでも取り上げてもらいやすくなるんです。事業再構築とCF、ビジネスコンテストとCFなどなどクラウドファンディングとの掛け合わせのアイデアは無数です。そのアイデアを具体化したサンプルを1つだけ制作してテストマーケティングができることは大きなメリットです。Makuake自身が「Makuakeはもはやクラウドファンディングではない」と発信しています。今までなかった商品を量産前にテスト販売して消費者やバイヤーに提供するDtoC(Direct to Consumer)、マーケティングプラットフォームとなっています。

【編集部】
CFとマーケティングについてもう少し具体的に教えてください。

【川辺】
商品やサービスを量産展開する前に顧客に直接アプローチしてその反応、需要を確認できます。応援してくれる顧客の声・反応や支援額が分かって市場のニーズを把握できます。またCFサービス会社からは支援者(顧客)の情報(名前、メールアドレス、住所など)を入手できます。SNSを使ってプロジェクトの活動報告をこまめに発信することで支援者との繋がりや共感・支持を広げ、いわゆるファンづくりに繋げることができます。またこのようなSNSでの実績を「CFでこれだけ人気でした~」ってリアル店での店頭POPで訴求すると、来店したお客さんにも商品の魅力が伝わりやすいです。またBtoB(卸売)や新規取引先を増やすための効果的な実績情報としても使えます。

うまくいったら他のCFおかわり展開もできます。MakuakeからCAMPFIREなどへ、また日本のCFだけではなく英語に翻訳するだけで世界へ向けて展開も簡単です。例えばアメリカの世界最大のキックスターターから世界最大の120ケ国に展開できます。アメリカではインディゴーゴーも有名です。台湾ではゼグゼグ。CFでローコスト、ローリスク、スピーディーに越境ECが可能になります。

【編集部】
なるほど、資金調達だけではなく、いろいろな面での利点があるそうですね?他にはどんなことがありますか?

【川辺】
そうですね、CFを資金調達目的でやったら大抵の場合、うまくいきません。お金は後か らついてくるといった考え方をすることが大切 です。購入型CFに取り組み、実行していく 過程で先ほどのようなマーケテイングの効果 や社内人材の育成・教育に直接つながります。

市場調査、ニーズ調査、差別化の検討、HP やSNS を使ったお客さんとの関係づくりなど を実際に体験しながら進めることができます。またSNSで届く支援者からのメッセージが従 業員のモチベーションアップになることも大き いです。CFのプロジェクトを進めることでどんな会社なのかを自然にPRできます。あえて求 人募集を行わなくても会社を知ってもらえま す。新分野や新しい事業への挑戦にあたって は確かに資金は重要なファクターですがその資金調達を第一目的とするのではなく、複眼 的な視点で取り組むことが大切だと思います。

【編集部】
CFはこれからもどんどん進化していきそうですね!
本日は、ありがとうございました。
【編集部】
今回のBWS、購入型CFに参加された方から感想をいただきたいと思います。
有限会社柏木鉄工の柏木社長、ビジネスワークショップに参加いただき有難うございました。ご感想はいかがでしたか?
【柏木】
大変勉強になりました。正直なところ今までクラウドファンディングは資金調達のためのものと思っていましたが大きな誤解だったことがよくわかりました。CFのプロジェクトを通して会社のPRやどんな会社かを告知して発信したりして新規の人材採用にも生かせること、成功している会社がそうだと知りました。弊社は個別受託生産型の製缶業ですが、昨年、事業再構築補助金で導入した3Dレーザー設備を活用して端材、廃材を使って独自に何か商品ができないか考えていました。既存設備と廃材を使うので資金調達は当面の大きな問題ではありませんでした。BWSに参加してCFを準備し実行することが実践的な人材教育となって、それが会社のPRにもなって採用においていい繋がりになることなど大きな発見でした。11月のビジネスワークショップの後には川辺さんのサポートをいただきながら今年3月に端材をアップサイクルする「カシテツ ワクワクものづくりプロジェクト」をスタートしました。第1弾のCFは2023年6月頃からスタートさせる予定です。
【編集部】
そうですか! それは楽しみですね。
BWSを通しての新しい出会いから新たな動きが生まれていることを私たちも大変うれしく思います。ぜひとも成功させていただき、またそのお話もお聞かせください。 有難うございました。

 

【川辺 友之(TOMOYUKI KAWABE)】
1998年大阪谷町で家業の紳士服製造卸業を承継した後、2001年に大手得意先が倒産し連鎖倒産の危機に陥ったが、ネット通販とクラウドファンディングを活用して再生させ「ナニワのダビンチ」として新聞・雑誌・TVに取り上げられる。
2007年から地元の中小企業経営者を集めての勉強会を開始し、クラウドファンディングと出会い、新ブランド「武将スーツ」を開発した。
第一弾の「真田幸村スーツ」は全国のファンから約250万円の開発資金を集める。
自らクラウドファンディングに挑戦した経験を基に2018年5月クラウドファンディングのコンサル会社、株式会社パーシヴァルを設立。今日まで約600件のクラウドファンディングをプロデュースし、約3億円の資金調達実績。
2022年ソフトバンク社内ベンチャーから立ち上がったOpen Street株式会社へ入社。

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